第1165回  生命は  〜吉野弘さんの詩〜

 
平成27年 5月28日〜

 こんな詩に出会いました。吉野弘さんの詩です。

  生命は
  自分自身だけでは完結できないように
  つくられているらしい

 
花も
  めしべとおしべが揃っているだけでは
  不充分で  虫や風が訪れて
  めしべとおしべを仲立ちする  

  生命はすべて  
  その中に欠如を抱き
  それを他者から満たしてもらうのだ
  世界は多分  他者の総和 

  私は今日
  どこかの花のための  
  虻(あぶ)だったかもしれない  

  そして明日は
  誰かが  私という花のための  
  虻であるかもしれない  
          
詩集「風が吹くと」より


         


           私も一言(伝言板)