解離性障害Dissociative Disorders

 最近まで、まれで不可解な精神医学的に珍しいと見なされていた、解離性同一性障害(DID)(以前には多重人格障害-MPDとして知られていた)および他の解離性障害は、幼年期の深刻な心的外傷、最も典型的には、極端な、繰り返す、身体的、性的かつ/または情緒的な虐待、のかなり一般的な影響であると今では理解されています。

 精神障害の診断と統計マニュアルIV(アメリカ精神医学協会、1994年)では、多重人格障害(MPD)が、重要な経験的な研究の結果、障害についての専門的理解の変化を反映して、解離性同一性障害(DID)に変更されました。

 アメリカで一般住民の8%に影響する主要な精神疾患として広く認められた心的外傷性ストレス障害(PTSD)は、解離性障害と密接な関係があります。実際、解離性障害と診断された人々の80-100%は、さらにPTSDという第2の診断を持っています。心的外傷障害への個人と社会の代償は非常に高いものがあります。最近の研究は、心的外傷障害を持った人々の間の自殺企図の危険が大うつ病を有する人々の中よりもさらに高いことを示唆しています。さらに、心的外傷障害を持った人々がアルコール中毒、慢性の医学的病気および次の世代における虐待のより高い割合を持っているという証拠があります。

解離とは何か
 解離は、人の考え、記憶、感情、行動あるいは同一性の感覚の中のつながりの欠乏を生ずる精神的な過程です。ある人が解離状態にある期間中に、ある情報は他の情報に、それが通常そうであるようには関係していません。例えば、心的外傷的な経験をしている間に、人は、彼の現行の記憶から、場所の記憶および心的外傷の状況を分離するかも知れません、そしてそれは、心的外傷の恐れおよび苦痛からの一時的な精神の逃避、ある場合には、その経験周囲の記憶隔差に帰着します。この過程が記憶の変化を生みだすことができるので、頻繁に解離する人々は個人の歴史および同一性の彼らの感覚が影響されることをしばしば知ります。
 ほとんどの臨床医は、解離が厳しさの連続に存在すると信じます。この連続は広範囲の経験および/または症候を反映します。一方では、穏やかな分離経験はほとんどの人々に共通です。例えば、白日夢、ハイウェー催眠状態(距離が経過するように次から次へと進展していく恍惚様状態) 、本か映画の中で「自分を見失う」こと、すべてが人のごく身近なところを認識する意識との「接触喪失」を含んでいます。反対の極は、機能の重大な悪化あるいは機能不能に帰着するかもしれない解離性障害の症例における様な、複雑な慢性の解離です。解離性障害を有する何人かの人々は様々な職業で社会に寄与して、知的職業に就くことができます、芸術、そして公共事業――毎日互いに交流し合う同僚、隣人および他の人々には正常に機能しているように見えます。
 DIDを含む様々な解離性障害中の症候および経験は大部分重複します。明瞭にするために、このパンフレットは解離性障害を集合的な術語と呼ぶでしょう。自分の特別の状況および診断についての疑問に答えるために、個々人は資格を有する精神保健提供者から支援を求めるべきです。

解離性障害はどのように進展するでしょうか
 身体的な回避がない圧倒的な心的外傷的状況に直面した時、子供は、彼または彼女の頭の中で「去る」という手段に訴えるかも知れません。子供は、急性の身体的・情緒的な苦痛あるいはその苦痛の不安な予期に対する非常に有効な防御として典型的にはこの能力を使用します。この解離的過程によって、心的外傷の経験の考え、感情、記憶および知覚を心理的に分離することによって、あたかも心的外傷が生じなかったかのように子供が機能することを可能にします。
 「絶望的な」状況に耐える個人が健全に機能するいくつかの領域を維持することをそれらが可能にするので、解離性障害はしばしば高度に創造的な存続技術と呼ばれます。しかしながら、繰り返し身体的および性的に攻撃された子供にとって、時間とともに、防衛的解離は強化され条件付けられるようになります。解離性逃避が非常に有効なので、彼らが脅かされていると感じる場合あるいは不安に感じる場合は常に、それに非常に熟練した子供は自動的にそれを使用するかも知れません--たとえ不安を生み出す状況が極端でもなければ虐待的でなくても。
 しばしば、心的外傷の状況が遠い過去となった後でさえ、その、取り残された防衛的な解離様式は残ります。慢性の防衛的解離は仕事、社会的そして日々の活動における重大な機能障害に結びつくかもしれません。繰り返された解離は、結局彼ら自身の同一性を担う一連の個別の実体、すなわち精神状態に帰着するかもしれません。これらの実体はDID体制の内部「人格状態」になるかもしれません。これらの状態の間を意識が変わることは、「スイッチング」としばしば評されます。

解離性障害の症候にはどのようなものがありますか
 解離性障害を有する人々は、下記のうちの何かを経験するかもしれません。すなわち、うつ病、情緒不安定、自殺傾向、睡眠障害(不眠症、夜驚症および夢遊)、パニック発作および恐怖症(フラッシュバック、刺激あるいは「引き金」への反応)、アルコールおよび薬物乱用、強迫および儀式、精神疾患類似の症候(幻聴、幻視を含む)および食欲異常です。さらに、解離性障害を有する個人は頭痛、健忘、時間損失、恍惚状態、そして「体外離脱」を経験することができます、一部の解離性障害患者は、自己迫害、自己破壊および実に暴力(自分に対するものと、外側に向かうものの両方)への傾向を持っています。

誰が解離性障害にかかるのでしょうか
 解離性障害を発現させる大多数の個人(98〜99%も)は、幼年期(通常9歳の前の)の敏感な発育期において反復性の、圧倒的な、しばしば生死に関わるような心的外傷の歴史を記録しました。また、彼らは、解離に対する遺伝的な生物学的素質を有するかもしれません。私たちの文化では、解離性障害の最も頻繁な前触れは幼年期における極度の、身体的、情緒的、そして性的虐待です。しかし、幼年期における他の種類の心的外傷(自然災害、侵襲的な医学的処置、戦争、誘拐および拷問のような)からの生還者は、やはり解離性障害の発現により反応しました。
 現在の研究は、DIDが母集団全体の1%、および恐らく精神病院に入院中の人々(その多くは他の診断を受け取った)の5-20%もに影響するかもしれないことを示します。薬物依存を有する個人、性的虐待からの生還者の間での発生率はさらに高いのです。これらの統計は、今日の4つの大きな精神保健問題の1つとして、精神分裂病、うつ病および不安症と同じカテゴリーに解離性障害を入れます。
 大多数の現在の文献は、解離性障害が主に女性の間で認められることを示しています。しかしながら、最新の研究は、その障害が男性人口中にも等しく蔓延しているかもしれない(しかし、診断される頻度はより低い)ことを示しています。解離性障害を有する男性は、他の精神疾患あるいは薬物およびアルコール乱用の治療中であるのが最もありそうです。あるいは、彼らは投獄されているかもしれません。

なぜ解離性障害はしばしば誤診されるのでしょうか
 解離性障害の生還者は、しばしば精神保健体制の中で結果的に四苦八苦し、誤診を受け入れて数年を過ごします。それらは症候のための治療を得ますが、実際の進歩はほとんどないか全くなく、セラピストからセラピストに、および薬物治療から薬物治療に変わります。研究は、解離性障害を有する人々が精神保健体制において正確な診断に先立って平均して7年を過ごしたことを記録しました。解離性障害を有する人に治療を求めさせる症候のリストが、他の多くの精神医学の診断のものに非常に似ているので、これは一般的です。実際、解離性障害と診断される多くの人々が、さらにうつ病、不安あるいはパニック障害の第2の診断をもっています。

人々は本当に多重人格を有してるのでしょうか
 はい、そして、いいえ。多重人格障害から解離性同一性障害まで障害の名前を変更するという精神医学界の決定理由のうちの1つは、「多重人格」が多少誤解を招きやすい用語であるということです。DIDと診断された人は、あたかも彼女が、2つ以上の実体(すなわち人格状態)を彼女の内側に持つかのように感じます。それらの実体は各々それ自身の独立した方法で、関係し、知覚し、思考しそして彼女自身および彼女の生活について思い出します。これらの実体の2つ以上が所定の時間にその人の振る舞いを管理する場合、DIDの診断を下すことができます。これらの実体は以前にしばしば「人格」と呼ばれました。この用語が、私たちの心理学的構成の総体的な様相として単語の一般的定義を正確に反映しなかったにもかかわらず。これらの実体について記述するためにセラピストおよび生還者によってしばしば使用される他の用語は次のとおりです。「交替人格」、「変化形」、「部分」、「意識の状態」、「自我状態」、また「同一性」。これらの交互の状態は非常に異なるように見えるかもしれませんが、それらがすべて一人の人の現れであることを心に留めておくことが重要です。

解離性障害は治癒するでしょうか
 はい。解離性障害は、薬物治療、催眠療法、および芸術あるいは運動療法のような付加的治療を含む、一連の他の治療様式と同様に個々の精神療法、あるいは「話し合い療法」にも高度に反応します。実際、同じ様に重症の精神医学的な疾病の中で、適切な治療が試みられ完了された場合、解離性障害は最良の予後をもたらす状態かもしれません。治療の経過は長期にわたり、解離された心的外傷的経験を思い出し取り戻すことを一般に含んでいるとともに、集中的で、常に苦痛を伴います。しかしながら、解離性障害を有する個人は、様々な設定で働くすべての専門的背景をもつセラピストによって成功裡に治療されおわります。



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