第1220回 散華楽(さんげらく)

 平成28年 6月 16日〜

 若いお嬢さん方で、本堂が一杯のお寺があったといいます。
羨ましいこと、どうすれば、こんなに若い人が参拝くださるのか、そのご苦労を
住職にお尋ねしましたが、はっきりした返事は、いただけなかったとのことです。

工夫をすれば、努力すれば若い人でも、ちゃんと参っていただくのだと、

心強くしましたが、どう工夫すれが、若い人にご縁を結ぶことが出来るのか、
なかなか、その方法を見つけだせずにいたとのこと。


 法事の席に、そのお寺の世話役が、親戚として参列されていたので
これはチャンスと、お話を聞きましたら、こんなことをおっしゃたとのこと。

うちの寺では、総代で熱心な方がいて、その方がいつもおっしゃるには、
法要の行道でまく、散華を持っていると、お産が樂になるのだと、若い女性を

誘っておられるとのこと、散華楽(さんげらく) お産が樂だと。

その証拠に、お寺によく参っていたお婆ちゃんも、その前のお婆ちゃんも、
みんなお産は楽だった、5人も10人も出産したが、みな楽だった。

仏さまのお話を聞いて、お念仏をしていると、出産が楽だとの話です。

華葩だけを受け取って、お守りのように持っていても効果が無く、お話を
聞くことが大事だとのお勧めです。
その結果、若いお嬢さんたちが沢山参拝されるようになったのだと。

 仏教には 方便という言葉があります。
一般には 嘘も方便という使い方もありますが、仏教では、巧みな方法を
用いて、人々を真実の法に導くための仮のてだて、巧みな教化の方法のことを言います。
何としても、若い時にご縁に遇ってほしいとの強い願いから出たものと思います。

 同じようなこととして、「お参りしないと虫になる」とのことわざが
使われている地域があると聞きました。
農家にとっては、台風や大雨や水害など、人間の力ではどうすることも
出来ない自然現象があります。

しかし、病虫害の被害は、人間の力である程度は防ぐことが出来る
ものなのでしょう。
日頃から、田んぼに通い、じっくりと丁寧に稲を見ていれば、大事になる前に
虫の害を防ぐことが出来るのでしょう。

誰かが怠けて害虫を発生させてしまうと、取り返しがつかず、廻りのみんなに
迷惑をかけて大変なことになる。
みんながお寺にお参りしているのに、ひとり怠けていることを許さない
そんな人は、虫になる、嫌われ者になるとの言葉だったと思います。

 お聴聞すると本当に安座になるのか、お産が樂なのか、科学的に証明はできませんが、
何としても、お聴聞して欲しいとの先輩達の手立てだろうと思います。

 お寺の過去帳をコンピュータでも管理していますが、本堂でよく顔を
見る方と、ご法話にまったくご縁が無かった方の平均寿命を比較してみると、
十歳ほど違うことが分かります。

三〇〇人余りの物故者全体の平均寿命に比べても、お聴聞されたていた方々の、
平均寿命は、六歳ほど長いものです。
元気で長生きだったから、本堂にお参りされたのかもしれませんが、やはり、
ご縁のある方、日頃からお聴聞している人は 長生きが出来きて、
仏さまの はたらきを充分に味わうことが出来る 豊かな人生を
受け取っておられたのだろうと思います。

同じ人生ならば、一人で悩み苦しむ辛い人生ではなく、多くの力にささえられている
ことを味わえる、慶び多い毎日でありたいものです。


         


           私も一言(伝言板)