オオカミと少年(イソップ童話より)
| 男ん子の羊の番ばしよった。なしかっちゅーぎオオカミの来て羊ば襲うけんが。 | 一人の少年が羊の番をしていました。オオカミがやって来て羊を襲うからです。 |
| そいばってんオオオカてん、めっちゃ出てこん。 | でもオオカミなどめったに現れません。 |
| (何じゃい、気色のがらってすっことのなかかにゃー) | (何か気が晴れるような面白いことはないかなぁ) |
| 男ん子はひーしてひといで羊の番ばしよっけんが、がばいとぜんなかった。 | 少年は1日中一人で羊の番をしているので、とても退屈していました。 |
| (ほんなこてオオカミのくっぎどがんなろーかー。ためし村の人ば呼んでみゅー) | (もし、本当にオオカミが来たらどうなるだろう。試しに村の人を呼んでみよう) |
| 男ん子はがばいたっか声でおらんだ。 | 少年は大声で叫びました。 |
| 「だいじゃい来てー!オオカミの来たぁ!」 | 「誰か来てー!オオカミが来たぁ!」 |
| 声ば聞いた村の人たちは、手に棒てん石てん持ってかけてきんさった。 | その声を聞いた村の人たちが、手に棒や石を持ってかけつけてきました。 |
| ばってん、オオカミてんどこにでんおらん。 | しかし、オオカミなどどこにもいません。 |
| 村の人が聞いてみたぎ、男ん子はけろっとゆーた。 | 村の人たちが少年に尋ねると、少年はけろっとして答えました。 |
| 「すらごとさい。だいでんば呼んでみゅーて思うただけ」 | 「うそだよ。みんなを呼んでみたかっただけさ」 |
| 村の人たちはだいでんはらかいたばってん、オオカミもおらんけんが、ほっとして戻っていきんさった。 | 村の人たちは腹を立てましたが、それでもほっとして戻っていきました。 |
| 何日じゃいしたぎ、男ん子はまたおらんで村の人ば呼んだ。 | 何日かすると、少年はまた大声で村の人たちを呼びました。 |
| 「だいじゃい助けてー!オオカミの来たぁ!」 | 「誰か助けてー!オオカミが来たぁ!」 |
| 村の人たちは、おろたえてかけてきんさったばってん、やっぱいオオカミてんどこにでんおらん。 | 村の人たちは、慌ててかけつけましたが、やっぱりオオカミなんてどこにもいません。 |
| 「すらごとゆーともたいがいぶんにせろ」 | 「嘘をつくのもいいかげんにしろ」 |
| 男ん子はわりゃーかぶってゆーた。 | 少年は笑いながら言いました。 |
| 「ほんなこてオオカミのくっぎ、どがんなっかなーと思うたと」 | 「もし、本当にオオカミが来たら、どうなるかと思ってさ」 |
| 男ん子はそいからでんとぜんなかぎ、おらんで村の人ば呼んだ。 | 少年はそれからも退屈になると、大声で村の人たちを呼びました。 |
| すらごとやろーて思うとっても、ほんなこてオオカミの来とっぎおおごとけんが、そのたんび村の人たちはかけてきんさった。 | 嘘かもしれないと思ってはいても、本当にオオカミが来たら大変とその度に村の人たちはかけつけました。 |
| 「あいはすらごとばっかいゆー。もうまたとだまされんぼ。」 | 「あいつはとんでもないうそつきだ。もう二度とだまされないぞ。」 |
| 村の人たちはすっかいはらかいてしまいんさった。 | 村の人たちはすっかり腹を立ててしまいました。 |
| ばってんそがんしよったぎ、男ん子がいつもんごと羊の番ばしよっとけ、ほんなこてオオカミの来てしもうたと。 | ところがある日のこと、いつものように少年が羊の番をしていると、とうとう本物のオオカミがやってきてしまったのです。 |
| 男ん子はあおーなっておらんだ。 | 少年は青くなって叫びました。 |
| 「助けてー!オオカミの来たぁ!」 | 「助けてくれー!オオカミが来たぁ!」 |
| そいばってんが、だいでん信用しんさなか。 | でも、その言葉を信用する人はいません。 |
| 「ほんなこててー!今度はほんなこてオオカミの来たとー!」 | 「本当だよー!今度こそ本当にオオカミが来たんだぁ!」 |
| 「また、すらごといいよっくさ」 | 「また、嘘をついてるに決まっている。」 |
| 村の人ったちは知らん顔して、だいでんかけてきてくんさなかった。 | 村の人たちは知らん顔で誰一人駆けつけてはくれませんでした。 |
| 男ん子が番しよった羊は、すっぱいオオカミにいち殺されてしもうたて。 | 少年が番をしていた羊は、一匹残らずオオカミに殺されてしまいました。 |
| (こいでしみゃー) | (おしまい) |
1999.07.02