士農工商 もうすぐ江戸時代に逆戻り「世襲万能の世の中」

 何の根拠もなく、少年犯罪の多発もなにもかも「受験戦争」や「詰め込み教育」のせいにして、公教育の内容を質的に低下させ、量的に減少させようとする、サウスポー文化人や官僚エスタブリッシュメントたち。社会的弱者の教育を受ける権利、就中、高度の教育を受ける権利を実質的に形骸化しようとするこれらの行動は、筆者の目には、醜悪なエリート意識をその高慢な衣の下に隠し、建前上はその黒い舌先三寸で「学歴なんて全然関係ない」などといって大衆を愚弄しているとしか見えない。これはすなわち、今までの「国民の愚民視」から「国民の愚民化」へと方針転換したのであろう。それによって社会の流動性を低下させるのがお偉い方々のねらいである。
 社会の流動性を極限にまで徹底して押さえ込む制度が、世襲制である。国を富ませ国力を付けるために、明治以来その弊害を取り除く努力が払われ、そのため社会の流動性の確保が図られてきた。しかし最近ついにその反対の流れが顕在化してきたようである。国会議員は二世議員、三世議員のオンパレード。環境に恵まれているはずの彼らだが、どういう訳か私立大学卒が多い。もはや国会議員の家柄が確立した感がある。それ以外の議員と言えばほとんどが現代の準貴族ともいうべき官僚様のご出身である。彼らの多くは言うまでもなく東大出身の知的レベルが高く権力志向旺盛な野心家である。彼らはギブ・アンド・テイクの原則の下、政、官、財横断的な門閥、閨閥を形作っているのである。世襲制は政治の世界ばかりではない。芸能界の世襲など勝手にやっていればいいのだが、学問の世界でさえ大学教授の世襲が見られる。小学校や中学校の先生もなぜだか代々続いた人が多い。さらに病院も世襲である。これなど、法律で世襲制度を規定しているのだから驚きである。特定郵便局長どころの騒ぎではない。初めて聞く人にはわかりにくいと思われるので少し解説を加えると、医療費抑制のため、「医療法」という法律で「医療圏」のなかの病院のベッド数が一定に決められている。ところが全国のほとんどの医療圏においてすでに一杯かややもするとオーバーしているのが現状である。今現在、存在する病院は「既得権」を有しているので、新たに病院を開設することは実際上出来ないのである。
 ローマは共和制から帝政に変わり、さらにはコンスタンチヌス帝によって「世襲制」が導入された。たしかに、現代の日本は、外見上だけとはいうものの自由民主主義の政体をとっている。しかし、ローマの例を見てもわかる通り、いつでも「古い」政治体制や社会制度になりうるのである。江戸時代のような社会になるのも案外と早いかもしれない。



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