ヒンドゥー至上主義と科学

 
本人にとって、そして、おそらく世界の大多数の人々にとって、大変驚くべきことには、ヒンドゥー至上主義者はアーリア人のインド侵入という事実を認めない。何と、彼らはアーリア人がインドから四方に広がったのだと主張するのである。そして、アーリア人侵入説に対して、概略以下のように批判する。

ーリア人の侵入という発想のウラには、以下のような社会的・政治的な含意がある。
1.インドを、互いに敵意ある北のアーリア人および南のドラビダ人に分割することにより、インド人を分割し、社会的緊張の源を持続させる。
2.英国人に彼らのインド征服の弁解を与える。彼らは、アーリア人の先祖が一千年前に行ったことだけを行っているに過ぎないと主張することが出来た。
3.ヴェーダ文化が中東の文化に由来するという説をこしらえる役目をした。
4.インドの科学がギリシアからその基礎を与えられたとの説を可能にした。
5.西洋の文化および宗教の優勢を証明して、社会的、政治的、経済的支配に役立った。ヒンドゥー教徒に 彼らの文化を恥じるように感じさせた。インド文化が世界文化の周辺的なものに過ぎないと彼らに思わせた。
6.このような見解は文化的帝国主義である。西側のベーダ学者は、英国陸軍が政治的に行ったヒンズー教徒の分割統治を知的領域の中で行った。
7.インドの大学は、さらに自分の文化および国を汚すような見解を提示する西洋の歴史本およびマックス・ミュラーのようなキリスト教の宣教師学者によって行われた「ヴェーダ」の翻訳を使用する。
8.ヒンズー学者が黙っているか、受け身で自分の文化の誤解を受理すれば、自分の文化および宗教を裏切ることである。

 
方最近の遺伝子研究の発展はめざましくインドの人々の起源についても以下のように科学的に明らかになりつつある。

 
ンド亜大陸に住んでいる、およそ10億人の起源および類似点については長く議論されてきた。これは、ひとつには、インドの遺伝構造に影響を及ぼした移住民の様々な波のせいである。これらの波の最も最近のものにおいて、西ユーラシアのインドヨーロッパ語族が、北西からインドに入り、亜大陸の至る所に拡がった。彼らは先住のドラビタ語族と混合したか置き換わったと言われている。その後、彼らはヒンズー・カースト制度を確立し、より高いランクのカーストにまず最初に彼ら自身を置いたと思われる。
 現代のインドのカーストに属する人間集団における西ユーラシア人の影響を調査するために、異なるランクの8つのカーストからのおよそ265人の男性とおよそ750人のアフリカ人、アジア人、ヨーロッパ人および他のインド人とにおけるミトコンドリアDNA(超可変領域1と14制限部位多形の400 bp)、Y染色体(20の両対立形質の多形および5つの短い直列型反復配列)の変異を比較した。母系に遺伝するミトコンドリアDNAについては、各カーストがアジア人に最も似ている。しかしながら、インドのミトコンドリアDNAハロタイプの20%-30%は西ユーラシアのハロタイプ群に属する。また、これらのハロタイプの頻度はカースト・ランクに比例する。西ユーラシアのハロタイプの最も高い頻度が上位カーストで見られる。対照的に、父系に遺伝するY染色体変異については、各カーストはアジア人よりヨーロッパ人により似ている。さらに、ヨーロッパ人への類似性は、カースト・ランクに比例している。上位カーストはヨーロッパ人、特に東ヨーロッパ人に最も似ている。これらの所見は、より高いランクのカーストにより多くの西ユーラシアの男性が混合していることと一致している。しかしながら、ミトコンドリアのゲノムおよびY染色体は各々単一の半数体の遺伝子座のみを表し、大きな確率的な変化、障害および選択的な掃引の影響を受けやすい。したがって、分析力を高めるために、全カーストの40人の独立した、両親から遺伝した常染色体の遺伝子座(1つのLINE-1および39のAlu要素)および大陸の人間集団(およそ600の個人)を分析した。
 これらのデータの分析は、上位カーストがアジア人よりもヨーロッパ人に対して高い類似点を持っていることを実証した。また、上位カーストはより低いカーストよりヨーロッパ人に著しくより似ている。集団的に、5つのデータセットはすべて、上位カーストがヨーロッパ人により似ているという傾向を示す。しかし、より低いカーストはアジア人により似ている。インドのカーストが、アジア人とヨーロッパ人へのカーストの遺伝類似におけるカーストランク関連性かつ性別特異的な差に帰着する、西ユーラシア人のまじった祖アジア人が起源であるとするのが最もありそうであると結論を下す。
Genome Res. 2001 Jun;11(6):994-1004. Genetic evidence on the origins of Indian caste populations.
Bamshad M, Kivisild T, Watkins WS, Dixon ME, Ricker CE, Rao BB, Naidu JM, Prasad BV, Reddy PG, Rasanayagam A, Papiha SS, Villems R, Redd AJ, Hammer MF, Nguyen SV, Carroll ML, Batzer MA, Jorde LB.
Department of Pediatrics, University of Utah, Salt Lake City, Utah 84112, USA. mike@genetics.utah.edu

 
するに、東ヨーロッパ人に近い、自らをアーリア(高貴)と称する民族がアジア人に近い先住民を征服してカースト制度をうち立てた、という世界的常識的インド史観と全く一致する結果であったということである。
 どこかの国でも、上述のヒンドゥー至上主義と軌を一にする単一民族説という議論と、上述と類似した遺伝子研究による科学的結果が出ているのだが・・・。



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