疑似歴史学(5)

Y.疑似科学
 世に疑似科学なるものがある。一見科学的に装いながら、その実、全くでたらめな思いこみやペテンを自分の説に不都合な事実を意図的に無視し、嘘八百のデータと詭弁・強弁を用いて大衆を欺くものである。よく知られているように、
ナチスの人種理論は「科学的」根拠に支えられていた。ドイツの人類学者でナチスの人種問題についての最高権威、イエナ大学ハンス・F・K・ギュンター教授は、北方人種がほかの下等な人種とどのように違っているかを詳細に論じた。彼は「人種の混合はすべて悪であり、ドイツは、北方人種の血統の純粋性を高めなければならない。」と主張している。さて、北方人種の卓越性を人類学上から最も早く主張したのはフランスの貴族ジョセフ・ド・ゴビノー伯爵で、彼は北方人種(高身長、ブロンドの髪、白い肌、青い目)を頂点とし、ニグロを底辺とする人種のヒエラルヒーを唱えた。
 アメリカ合衆国の歴史の初期には、主として聖書に基づいて、神はさまざまな人種を創造したが、それらを交婚させようとはいとしなかったこと、またニグロは召し使いの人種と定められたという主題の本やパンフレットが多く出された。チャールズ・キャロルの『ニグロは野獣である』(1900)、『イヴを誘惑したもの』(1902)によれば、
ニグロは高等な類人猿としてほかの動物とともに創造されたもので、ほかの獣たちと同じく心を持ったが魂を持たなかった。白人以外のすべての人種はアダムの種族とニグロ動物との混交から生じた雑種である。彼は有名な人類学者から引用し、自分の考え方に「科学的」な証拠を与えるために、脳の重さの表を転載したりする。彼が、自分が少しでも「偏見を持っている」と自覚していることをうかがわせるものは何もない。
 キャロルの人種学的議論で最も広く利用されているのは、ニグロの脳は平均して白人の脳よりわずかながら小さいという事実がある。しかし、白人の脳はエスキモー、ポリネシア人、アメリカ・インディアン、日本人の脳より小さいし、ネアンデルタール人も白人より大きい脳を持っていた。
 ジョン・カルホーンは「私に、ユークリッドの問題が解けるか、それともギリシャ語の動詞の格変化をいえるニグロを一人示せ。そうすれば私はニグロが人間であることを認めるだろう。」といった。
 このような説に対して、
ジョージ・バーナード・ショーは『人と超人』の中で、「傲慢なアメリカ国民は・・・ニグロに自分の靴を磨かせ、次に彼が靴磨きだという事実によってニグロの劣等性を証明する。」と書いている。
 この様に
擬似科学には、自分の信じたいことつまり、自分の感情を満足させ、自分の立場を強化し、自分の利益につながることを信じるため、また他人に信じさせるために、自説に都合の良い「科学的」データのみを拾い出し、原因と結果を逆転させ、可能性の低いことをあたかも普通にあることのように言うといった特徴が見られる。



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